日本では長くダイエットブームが続いています。とにかく痩せればキレイ！という時代から、今は健康的に痩せる、または健康のために痩せるというダイエット法が主流になってきました。確かに、肥満は健康に良くないと聞きますよね。ダイエットをすれば長生きできるのでしょうか？痩せすぎの人や脂肪がいっぱいあって太っているけど筋肉もあるよ、という人の健康リスクはどうなのでしょう？今回は加齢と筋肉の関係、筋肉と死亡率の関係について見ていきます。
筋肉は加齢とともに減少する？
歳をとると筋肉量が減少すると言われています。これについては日本の大学が日本人を対象に大規模な調査を実施しているので、その調査結果を見てみましょう。
40歳〜79歳の男性16,379人、女性21,660人を対象に40歳以降の筋肉量の変化率を調査しました。結果、全身の筋肉量は男女ともに加齢とともに減少するということがわかりました。まあ当たり前といえば当たり前ですね。
40代を過ぎると筋肉量が減少し、女性よりも男性の方が筋肉の衰える率が大きいということも分かります。加齢により筋肉量が減少し、全身の筋力低下が起こることをサルコペニアと言います。超高齢社会の日本では、サルコペニア予防に注目が集まっています。
筋肉を減少させる要因とは？
近年、筋肉の衰えには加齢が原因で起こる「慢性炎症」が関係しているということが分かってきています。
慢性炎症とは？
患部が痛む、赤く腫れる、熱を持つといった症状が出る炎症を「急性炎症」と言います。対して「慢性炎症」は患者にはっきりとした自覚症状が無く、知らないうちに体内で炎症が起こり慢性的な状態になっている炎症です。急性炎症の場合、症状が治まり治癒すれば炎症を起こしていた部分は元どおりになります。しかし慢性炎症は、すぐに治りづらく炎症が治まっても元に戻らないという厄介な特徴があるのです。
慢性炎症を起こす原因は
- 死んだ細胞の処理能力の低下
- 免疫細胞の異常な活性化
- 内臓脂肪の増加
- などだと考えられています。
慢性炎症と筋肉の衰えに関係があることは日本の別の大学の研究などで分かってきています。慢性炎症の症状が強いほど、筋肉量が減少するようです。
筋肉量が減り、脂肪が増えるとどうなるか？
脂肪が増え肥満度が上がると死亡率が上がるということが明らかになっています。肥満であることは喫煙していることと同じくらい体に悪いとも言われています。脂肪の増加に筋肉の減少が加わると、さらに死亡率が高くなります。
サルコペニアによる筋肉の減少、そして肥満による脂肪の増加という２つの症状が合わさった状態を「サルコペニア肥満」と言います。イギリスの大学の死亡率に関する調査によると、筋肉が減少すると正常の時に比べ死亡率は41％UP、脂肪が増加すると21％UPしますが、サルコペニア肥満の人は72％も死亡率がUPするという結果が出ているのです。
アジア人を対象にした調査も行われていて、筋肉の減少・脂肪の増加と比べて、サルコペニア肥満は３倍から７倍ほど死亡率が増加するという結果が出ています。脂肪が多く筋肉が少ないサルコペニア肥満になると、命に関わるリスクが非常に高くなるということです。
サルコペニア肥満解消のためには
サルコペニア肥満による死亡率を下げる方法としては、脂肪を減らすダイエット＋筋肉量を増加させるトレーニングが推奨されています。ですが、実際ダイエットをしながらトレーニングをするのはきついし大変ですよね…。
死亡率を下げるためには、まず筋肉量を増やす努力を
イギリスの大学で、サルコペニア肥満と死亡率についての調査が行われました。やはりサルコペニア肥満の状態は男性女性ともに死亡率を大幅に増加させるという結果が出ています。そして、次に死亡率が高いのは筋肉も脂肪も少ない状態でした。脂肪は多いけど筋肉も多い状態は、筋肉も脂肪も少ない状態より死亡率が低いという調査結果が出ているのです。
サルコペニア肥満＞筋肉も脂肪もない痩せ型＞脂肪も筋肉も多い肥満型＞筋肉が多く脂肪が少ないマッチョ型
つまり、脂肪を減らすことよりもまずは筋肉を増やすことで死亡率を下げることができるのです。ダイエットをしても、筋肉量が増えなければ依然死亡リスクは高いままです。ダイエットは後回しにして、筋トレをすると良いということですね。
長寿の秘訣は筋トレ
肥満は死亡リスクを高めますが、筋肉の減少も同じように死亡のリスクを高めるということが分かりました。理想は脂肪が少なく筋肉が多い状態ですが、少なくとも筋肉量を維持することで死亡リスクは減らすことができます。たとえ肥満でも、筋肉量がキープできていれば死亡リスクが下がります。
筋肉が減少し始める高齢になってから、筋肉量をキープするために筋トレを始めるのはなかなか大変です。若いうちから筋トレや運動をする習慣をつけておくことが長寿の秘訣かもしれませんね。
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